「従わなかった霊たち」とは?

ご質問コーナー

第1ペテロ3:19の解釈「従わなかった霊たち」について

ご質問;「もうご存知かもしれませんが、日本聖書刊行会のHPで『聖書翻訳の最前線』と題して、第一ペテロ3:19の解釈がされていました。”霊たち”をどう解釈するか、そして”ケールッソー”をどう訳すかが、解釈が分かれる所の焦点なのではと思いました。」

ご質問ありがとうございます。以下、そのHPからの引用を『』で表示して、11つ検討してみますので、ご参考にしてください。すでに書いてきた内容とも重なる部分もありますので、そちらもご参考にしてください。2つのご質問を2回に分けて、もう一度調べ直してみますのでよろしくお願いします。

 第3版では「その霊において、キリストは捕らわれの霊たちのところに行って、みことばを語られた」と訳されていた Iペテロ3:19を考えましょう。問題は「捕らわれの霊たち」がだれを指しているかです。死者の霊ととり、キリストは死者の世界=陰府で福音を伝えたとする解釈があります。また、続く20節に「ノアの時代に、従わなかった霊たち」とあることから、受肉前のキリストが、ノアの時代にも語りかけていたとする見方もあります。(HP引用終わり)

聖書の言葉は、まず、そのまま素直に読み取れば良いのではないでしょうか?それでも、意味がわからない時は、翻訳、訳語などの検討、時代背景や文化の違いなどの考慮、聖書の他の箇所での使われ方などを調べるのは助けになることでしょう。

この引用の文章で2点間違っているのは、「受肉前」ではなく、「受肉後」です。そして、文脈通りに読んで理解できるように、「イエス・キリストが十字架で刑罰を身代わりに受けられ、罪の償いが支払い済みとなった受難の直後」に、霊としてハデスにくだられされたのです。父なる神にイエス・キリストはご自分の霊をゆだねられました。父なる神はイエスの霊をハデスに送られたのです。

(今まで書いてきた所と重なると所もありますし、新たなこともありますので、過去の記事もご覧いただけるとより理解が深まると思います。)

イエスは大声で叫んで、言われた。「父よ。わが霊を御手にゆだねます。」こう言って、息を引き取られた。ルカ2324

「霊=プネウマ」の複数形は、「悪霊たち」ですか?

 しかしながら、新約聖書において「霊=プネウマ」の複数形は、普通「悪霊たち」のことです。「(神の)七つの御霊」という表現(黙示録)や、「御使い」を意味する「霊」、旧約時代の聖徒たちに言及すると思われる「完全な者とされた義人たちの霊」もありますが、死者の霊を表す明白な箇所はありません。また、「捕らわれている」は直訳すれば「牢獄にいる」で、黙示18:2では「汚れた霊たちの巣窟」、107ではサタンが閉じ込められていた「牢」を意味しています。そこで、「捕らわれの霊たち」は「堕落して閉じ込められていた御使いたち/霊たち」のことと理解すべきでしょう。(HP引用終わり) 

啓示(黙示)録では、「(神の)七つの御霊」のプネウマπνεμαの複数形ですが、聖霊なる神のことです。黙示録1431453回とも聖霊のことで、プネウマの複数形です。「悪霊ども」のことではありません。『新約聖書において「霊=プネウマ」の複数形は、普通「悪霊たち」のことです。』と言い切るのは間違いです。聖霊をさすこともあり、亡くなった人たちの霊をさすこともあるからです。文脈上で判断する必要があります。

「義人たちの霊」(ヘブル1223)もプネウマの複数形であり、イエス・キリストを救い主として信頼した者たち、あるいは、メシアを待ち望んでいた人びとは、現在肉体を離れ、「死者の霊」となっています。『「死者の霊」を表す明白な箇所はありません。』も間違いです。また、亡くなられた方々は皆、肉体を持たない霊魂の状態であるというのが、聖書全体の教えです。

「捕らわれた牢」とは?

「牢獄」の中にとある「牢」のギリシャ語フラケーφυλακή は「かご、おり、留置所、拘置所、獄、監房、病棟」などの意味があります。新約聖書で45回使われていますが、一般的なの牢屋もさしています。根拠としてあげられたている黙示録182の出来事は艱難期後半に起こることで、「汚れた霊たちの巣窟」のフラケーは実際の牢獄を指していません。「大バビロン」の象徴的な描写ですので、実際の「悪霊どもが閉じ込められる獄」ではありません。

207107は引用間違い)サタンが閉じ込められる(アブッソス ἄβυσσος)底知れぬ所は千年王国の期間中のことです。18:2も20:7も未来のこと指しています。アブッソスの中にはサタンはまだ投げ込まれていません。アブッソスを「牢」(フラケー)と言っているだけであって、だから「従わなかった霊たち」は、悪霊をさすというのは間違った短絡的な解釈です。

「捕らわれの霊たち」の特徴

次の説である Iペテロ320節に「捕らわれの霊たち」の説明がありますのでまとめてみます。それに該当するものが「捕らわれの霊たち」ということになります。

1、ノアの時代の

2、箱船が造られていた間

3、神が忍耐して待っておられた時に

4、「従わなかった霊たち」

5、箱船に入らないで救われなかった霊たちです。

「捕らわれの霊たち」は「悪霊ども」?

悪霊ども(堕天使を含む)に当てはまりますか?

1、悪霊どもはノアの時代に限定されず、存在していますので、悪霊には該当しません。

2、箱船の完成は、悪霊どもと関係ありません。箱船の完成は人の救いと関係していましたので、これも当てはまりません。

3、神は、悪霊どものことを、救われる様にと忍耐して待っていたわけではありません。悪霊は救いの対象外ですので、この項目も悪霊のことではありません。

4、神は悪霊どもが従う可能性は0%ですので、少しも期待していません。「従わない霊」が悪霊です。「従わなかった」とは、「従う可能性」があり、期待されていたことを示していますので、悪霊のことではありません。

5、悪霊どもが「箱船に」入る必要があったでしょうか?悪霊どもは、洪水の水では滅びません。悪霊どもは、箱船のドアが閉められてもどこからでも入れます。悪霊を助けるために箱船を作ったわけではありませんので、これも悪霊には当てはまりません。

したがって、悪霊どもや堕天使を指すとするのは、間違いです。霊界にいるサタンも悪霊どももイエス・キリストが十字架で勝利された事実を、言われなくても知っています。スポーツの試合で、負けたチームに勝利宣言するようなもので、戦った本人が一番負けたことを知っているのですから、意味がありません。十字架はサタンのかしらが踏み砕かれた霊的な戦いだったのです。ハデスに下ったのは、別の目的です。

「捕らわれの霊たち」を悪霊とするのは無理があり、間違いです。

「捕らわれの霊たち」は「亡くなられた人の霊たち」?

色々な教えにとらわれず、素直に読んで受け取れるように、「亡くなられた人々の霊たち」と思えます。

1、ノアの時代に生きていた人たちのこと

2、箱船が造られていた間、生きていた人たちのこと

3、神が忍耐して救われるように待っておられた、その時代の人たちのこと

4、箱船に入るように神は待っていたが、従わなかった人たちのこと

5、箱船に入らなかった当時の人たちが、洪水で溺死したため体は朽ちましたが、今は霊の状態になっている人たちのこと

この時亡くなられた人々の霊魂は、ハデスにいますので、牢獄や留置所に拘留中の身となりました。そのハデスにイエス・キリストは十字架のすぐ後に行かれたのです。「悪霊の世界に行った」と解釈するのは間違いです。「悪霊の世界に行くこと」は、聖書的根拠が全くなく、神の目的でもなく、わざわざ十字架の苦しみの直後に行く意味がありません。 5つの項目にぴったり当てはまるのは、「亡くなられた人の霊たち」だけです。

それは、イエス・キリストがハデスに十字架の後に、遣わされたということと、ぴったり一致していますし、なぜハデスに行ったのかの説明がなされている重要な箇所だということになります。

イエス・キリストはハデスに遣わされた

使徒22331節に明確に書かれているのは、イエスはハデスに、遣わされたいうことです。それは聖書が語る事実ですから、そのまま受け取ることが大事です。それを変えようとするのは神のみことばとみこころに反することです。

ダビデも、ペテロと11人の使徒たちが語っているように、初代教会の使徒たちのメッセージの中心的な主題は、「イエス・キリストは十字架とその後、ハデスに遣わされ、3日目にハデスからよみがえらされた」ことです。

ハデスとは、イエスの救いを受けずに、亡くなられた人々が一時的に行っている霊的な場所のことです。その人々の霊がいるハデスにイエス・キリストは遣わされ、ハデスから復活させられたのは明確な事実ですから、それを土台に聖書を読み、解釈することが大事です。まさに、「従わなかった霊たち」がいる場所こそ、ハデスです。イエスはハデスに行ったと明確に書かれていることを、そのまま受け取りましょう。

それで後のことを予見して、キリストの復活について、『彼の魂はハデスに置き去られず、その肉体は朽ち果てない』と語ったのです。神はこのイエスをよみがえらせました。私たちはみな、そのことの証人です。使徒23132

そして、ハデスにいる「従わなかった霊たち」のところへ行ってくださいました。霊と魂は同義語としてここで使われています。彼の「魂」プシュクェーψυχήと「霊」プネウマπνεμαは同じものを指します。霊魂ということです。人は亡くなられると霊魂となるのです。
Iペテロ20節でも同様の使われ方をしています。「従わなかった霊たち」ではプネウマを使い、「わずか8人の霊魂(第3版は「人々」としている)」はプシュクェーをペテロはつかいましたが、同義語として言い換えただけです。どちらもイエスの死後の「霊魂」を表現したように「亡くなられた人たちの霊魂」を表現しています。

 
今日もウェブチャへようこそ!

ご質問の前半は、十分ご理解いただけたでしょうか? 正直なところ私も、偏見なく聖書が読めるようになるまでだいぶ時間がかかりました。今も、その過程にあります。この難解な箇所と呼ばれるIペテロ3:19は、素直に読むならば、難解なところはほとんどありません。そのまま理解すれば良いのです。

イエス・キリストが十字架の直後、ハデスに霊のまま行ってくださったということは、本当に驚くべき事実です。そうせざるを得なかったとも言えるでしょう。父なる神がイエスを遣わされ、イエスは霊魂の状態で、ハデスで福音を宣べ伝えられたのです。

一人として滅びることがないようにと願われている、神の愛をぜひ受け取っていただけますように!

神様の愛をいただいて最高の時間、最高の1日となりますように祈ります!

 
 
 
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コメント

  1. ヒデアキ イシダ より:
    はじめまして、こんにちは!
    素晴らしい解説ですね。
    しかも、とても丁寧で分かりやすい!
    聖書をきちんと読めば、必ずこのような理解になるはずですよね。

    私自身もギリシャ語も調べ、ほぼ同じ見解です。
    そしてwebchaさんのこの記事をツィートして共有したいと思いますので宜しくお願いいたします!

    私のツィッターのアドレスです。
    http://twitter.com/hideaki153je



    ペトロ第一3章19~4章6節は、今でもギリシャ語の原文をも無視するような酷い解説をするキリスト者も多くいるのが現実だと思います。

    そして、陰府に下られた人達にイエス様が回心の機会を与える事について頑として認めない人も多くいます。
    私自身、そんなに「嫌な事なのか?」むしろ亡くなられた私達の祖先の人々の中で救われる人がいるという事は大いに喜ぶべき事だと思いますし、とても楽しみでもあります。なにしろ再会出来るわけですから!

    特に多いのが「捕らわれてる霊」を悪霊としてしまう部分ではないでしょうか。
    「イエス様が悪霊達に福音を伝えるのか?」と良く良く考えれば直ぐに分かるはずですが…。

    陰府(よみ)と地獄の区別が出来てない、混同してる状態で聖書を読むと上のような間違った解釈になるので、本来は牧師がきちんと「陰府と地獄の意味を教えるべき」なのですが、その牧師も混同してる状態の人がそこそこいるという哀れな現実です。

    以上になりますが、他の記事も早速読ませて頂きます!
    • Masaluk より:
      返信がとっても遅くなてもうしわけありません。しっかり読んでくださって、ありがとうございます。「イエス様が悪霊に福音を伝えるわけがない」のところで吹き出してしまいました。先入観にとらわれず聖書をよく考えて読んでもらいたいですね。これからもよろしくお願いします。
  2. Masaluk より:
    いつもじっくり読んでいただいてとっても嬉しい限りです!

    詩編16:10の”よみ”は注釈に”シェオル”と使徒2:27、31の”よみ”は”ハデス”と同じ場所です。KJV以来英語の聖書は殆どがHellとなっていますが、それは間違いです。Hellはゲヘナを指しているのであり、ハデスはその前の一時的な留置所的なところです。

    >3 変更しました。

    永久保存版はいろいろに活用できそうですね。
    今後もよろしくお願いします!
  3. 応為 より:
    何度も聖書と照らし合わせながらジックリ読ませて頂きました。(スマホだと複雑な内容は理解し辛いですね!)

    詩編16:10の”よみ”は注釈に”シェオル”とあり、使徒2:27、31の”よみ”は”ハデス”となっていますが。これは同じ場所と解釈して良いのでしょうか?

    >3、神は悪霊どもが救われるようにと、忍耐して待っている対象ではないので、この項目も悪霊のことではありません。

    これは、>3 悪霊どもは、救われるようにと忍耐して待つ対象ではないので、~
    ではないでしょうか?または >3 神は悪霊どもが救われるようにと、忍耐して待っていたわけではないので、~ とか。
    ちょっと主語が分かり辛かったので、すみません。

    とても重要な今回のblogは、更に自分で御言葉や、繋がる、引用される箇所を整理して永久保存版?を作ってみようと思います。
    いつもありがとうございます!!
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